中小企業退職金共済事業
長年勤務した従業員に対して退職金を用意するかは企業ごとの判断に任せられていますが、優秀な人材の確保や従業員が安心して長く勤務できる環境を作るには退職金制度を用意することが望ましいです。
中小企業の場合は、退職金のために資金をストック(退職金の引き当て)をする手間に負担を感じる方が多いですが、中小企業退職金共済事業を活用すれば退職金を工面する問題を簡単に解決できます。
勤続年数が長ければ、掛け金以上の退職金が支払われるので、福利厚生の一環として中小企業退職金共済事業の活用を検討してみましょう。
中退共の概要
中小企業退職金共済事業は中小企業の退職金制度導入をサポートする目的で、相互共済と国の援助によって運営されている公的共済事業です。
雇用主(事業者)は従業員ごとに退職金共済契約を結んで月々の掛け金を払い、従業員が退職する際は共済から退職金が直接支払われます。
昭和34年から始まった制度で、令和2年4月末時点では370,487社が加入、約350万人の従業員を対象に4.9兆円の資産が運用されています。
参考元URL:中小企業退職金共済事業本部
利用する流れ
名称で分かる通り、利用できるのは中小企業に限定されていて、加入条件は一般業種で従業員300人以下または資本金3億円以下など業種別に一定の条件があります。
事業者が中小企業退職金共済に加入した場合、基本的にフルタイムで短期的な雇用契約期間がない正社員は全員加入しないといけないルールです。
月々の掛け金は2,000~30,000円で任意設定でき、従業員ごとに掛け金を個別設定することや途中で掛け金の変更をすることができます。
受け取れる金額
事業者や従業員がもっとも気になるのは、受け取れる金額および累計の積立金に対する支払率ですよね。
受け取れる金額は掛け金と加入期間によって変わり、1年未満の退職(解約)は支払いなし。数年程度の加入は掛け金から大幅に減額された金額になります。
おおよその目安ですが、10年以上加入することで累計積立金に対して100%以上の退職金が支払われる契約になり、加入期間が長いほど積立金から上乗せされる金額が大きくなる仕組みです。
また、最低限の補償がされる基本退職金に加え、共済が預かり資産で運用した結果に応じて運用利回りをプラスした付加退職金が支払われる場合があります。
国からの助成がある
中退共は早期解約で元本割れを起こすため、離職率が高い中小企業は運用効率の悪さを懸念するものです。
こうした問題を解決する目的で、国は新規加入者に対して加入4ヶ月後から1年にわたって、掛け金の50%(月5,000円が上限)を助成して加入促進しています。
助成と運用利回りの影響によって、一定期間以上の加入で金銭面のメリットが大きい退職金共済です。
離職率の高さに悩んでいる事業者の方でも、従業員の定着率アップ&優秀な人材の確保を目的に、中小企業退職金共済事業を活用した退職金制度の導入を積極的に検討してみてください。